こんにちは、「んふーされました」改め「餅屋ぷれ子(@predator_chan)」と申します。普段はろくに仕事もしないで、なめこ育成ばかりやっています。
この記事では、MTF(や一般男性)がボイトレを通じて、女声を手にするためのアプローチを紹介します。女声を体得することで、様々なメリットがありますよね。
- 声パスできるので、社会生活上での障害がなくなります
- 男性の恋人を作れます(女性の恋人ができるかはわかりません・・・)
- コンサート会場など、人の多い場所で「声が通らない」問題をクリアできます
見た目のパス度がイマイチでも、声パスできれば「ゴツい女」でパスできることも多いんですよね。「FFSするお金も無いから、ボイトレ頑張る」ってのもありだと思います。
さて、こんな記事を書いておいてあれですが、餅屋自身はまだ高い男性的な地声でパスってる程度で、女声を使いこなして「うぇ~い」ってほどの実力はまだありません。が、今回はここまで知りえた情報を整理したいことも兼ねて、記事にまとめることにしました。
なお、女声へのアプローチは様々ありますが、ここではできるだけ一般的なトレーニング方法を紹介します。「喉仏を指で無理やり押し込む」といったリスクのある方法は紹介しませんし、「カエル声」とか「エッジの抜き方」とか馴染みのなさすぎる方法も紹介しません(餅屋には理解できませんでした)。
また、女声のイントネーションや細かい調整方法といった発展的な方法は他の記事で紹介します。ここで紹介するのは、MTFが女声の一般的な周波数である(約172Hz~315Hz(平均217Hz))の声を出せるようになるための方法です。
ざっくり言うと
- iOS向け測定ソフトを紹介
- 各種声のトレーニング方法で声の高さを上げる方法を紹介
- 声オペはおすすめしない
目次
記事を読む前のお約束事
記事中の定義
本記事では、以下のように定義します。
- 表声・地声(チェストボイス):男性の低い声のこと。平均的な男声は110~150Hz程度だそうです
- 裏声(ファルセット):声帯を閉じずに発声した声のこと
- 芯のある裏声(ヘッドボイス):声帯を閉じて発声した裏声のこと
- ミックスボイス:地声を発声する筋肉と、裏声を発声する筋肉を両方上手に使って発声する、地声と裏声の中間的な高さの声のこと
- 喚声点(かんせいてん):地声と裏声の切り替わるポイント
この他、ボイトレサイトでは「ミドルボイス」という声が登場することもありますが、それは地声と裏声の中間的な高さの声のことだとお考えください。
ミックスボイスにせよ、ミドルボイスにせよ、「ミックスボイス(ミドルボイス)を出すための筋肉・声帯」はありません。
地声を発声する筋肉と、裏声を発声する筋肉を両方使って発声する、地声と裏声の中間的な高さの声のことを、ここではミックスボイスと呼びます。
餅屋の考えとしては、「ミックスボイスは地声と裏声を混ぜる」という表現に囚われると迷子になる気がしますので、今回はミックスボイスを地声を発声する筋肉と、裏声を発声する筋肉を両方上手に使って発声する、としました。
記事を参考にする前に(無茶なボイトレは喉を痛めるよ!)
そもそも。女声を出すためになぜボイトレが必要なのか
女声を出すためにボイトレが必要な理由は2つあります。
理由①:男性の声は低いので高い声を出す必要がある
みなさんが既に「女声 = 高い声」と認識しているように、女声は男声よりも高い声です。
以下のグラフは「女性と判定される声の特徴 -性同一性障害者の話声位-」から引用したもので、どの程度声が高ければ女性と認識されるか、を示したものです。
参考 女性と判定される声の特徴 -性同一性障害者の話声位-(2009, 音声言語医学50)
横軸のF0とは「フォルマント0」といい、声の一番基本となる周波数のことです。縦軸は声を聞いた聴者の何%に女性と判定されたか、を示します。
また、白抜きは女性と判定されなかったMTF、黒は女性と判定されたMTFのF0を示しています。6角形のシンボルは生物学的女性(非性同一性障害者)の声です。
この結果は、以下の事柄を示します。
- 女声と判定されたMTFの声の高さは約172Hz~315Hz(平均217Hz)
- 約170Hzを下回ると女声と判定されない
- 400Hz以上の声は高すぎてダメ(よく引き合いに出される「クロちゃん」の声)
- 約172Hz~315Hzの声が出ていても、女声と判定されない場合もある(イントネーションなどの問題なので、今回の記事では扱わない)
つまり、声の低いMTFは、最低でも約170Hz、可能なら、生物学的女性の平均値である約217Hzの声を出せるように訓練する必要があります。
理由②:裏声(ファルセット)は女声と異なる
では、「高い声なら裏声でもいいのではないか」と思われるかもしれませんが、裏声はキモいからダメ・・・ではなく、声の質が異なるので、女声とは少し異なります。
以下のサイトは、餅屋がミックスボイスの練習をする際によく見ているブログの1つで、ここには様々な声の波形が掲載されています。
- 裏声:サイン波のようなきれいな波形
- 女声:サイン波に似ているが、すこしぎざぎざしている
裏声じゃだめか?って話ですが、基本的に裏声は歪み感がなく裏声は裏声にしか聞こえず男成分も抜けませんので単純に裏声だけで女声に聞かせるのは難しい気がします。
上手い人が出す声は単純なファルセットやヘッドボイスとは音色が違うように感じるし、自分でやってみてもそうなので、女声の出し方というか特徴付ける要素は何か別にあるように思います。
もうちょっと技術的(?)な話をすると、裏声(ファルセット)は特に1,000Hz以上の高い音(倍音)が抜けてしまうので、「声の高さはクリアできるが、響かない」音になります。女声には約3000~7000Hz前後の倍音が豊富に含まれており、この高音部分の違いが男性の裏声と女声の違いを決定付けてしまいます。
以上より、男性が女声を出すためには、
- まず、約172Hz~315Hz(平均217Hz)の声を出せるようにする
- その上で、裏声にはない倍音成分を付加できるようにする
の2つのアプローチが必要になります。
なお、ある程度ボイトレが進み、喉をうまく使えるようになれば、高い声も容易に出せるようになりますので、多少女声っぽさがなくとも女声パスできる機会も増えてきます。また、このようなコンテンツを読まずとも、自己流で声を調整できるようになりますから、この記事の目標は約172Hz~315Hz(平均217Hz)の声を安定的に出せるようになることにしたいと思います。
女声ボイトレを始める前に。自分の声の高さや特徴を知っておこう
周波数測定アプリがあると役立つ!
では、さっそく女声ボイトレ・・・の前に、みなさんの今の声をチェックしましょう。よくあるチェック方法として、アプリを使って声の周波数を図る方法を紹介します。
「CanSeeVoice」(iOS用アプリ)
「CanSeeVoice」というiPhone・iPadアプリを利用すれば、みなさんの現在の声を測ることができます。
参考 CanSeeVoice(App Storeプレビュー)
「声の高さよりも、実際どう聞こえるかが重要」と考える方もいらっしゃいますが、それでもこの手のアプリを一度使ってみることを、餅屋はオススメしたいです。
- 声の高さが数値で分かるので、今のあなたの声が女声からどの程度遠いかがわかりやすい
- 約172Hz~315Hzの声を出すときの喉の感覚を覚えやすい
Android向けの声測定アプリはわかりません
餅屋はAndroid向けの声の測定アプリのことを知らないので、紹介できません。ツイッターで餅屋と仲良くしている方なら、声の測定ぐらいは手伝いますので、声を録音した上で餅屋にDMでご連絡ください。
周波数測定アプリで測るポイント
以下の2つは知っておくと、きっと役立つと思います。
- 普通に声を出したときの声の周波数
- 地声が出なくなる喚声点の位置
餅屋の場合、
- 素の声は70Hz~220Hz(ボイトレを始める前の、意識せずに出す声の高さは110Hzぐらい)
- 喚声点の位置は220Hz
と一般的な男性よりも低い声をしています。女声は餅屋の喚声点よりも高い周波数位置にありましたので、裏声に倍音成分を付加することで女声のベースとするアプローチが良さそうと考えました。
女声のアプローチ方法にしばしば登場する「地声のエッジを抜いて女声にする」方法は、元々声が高いMTFに有効な手法だと思います。平均的な声の高さを持つMTFは裏声からの女声アプローチのほうが良いと思います。
女声の基本となるボイトレを始めよう
ここでは付け焼刃的な方法ではなく、餅屋が「これならMTFが永続的に女声を出せるだろう」と信じている方法を紹介します。繰り返しますが、今私たちが目指す目標は、約172Hz~315Hzの声を出すことです。
具体的には以下の2つの事柄を自在に操れるように目指します。
- 裏声を使えるようになること
- 声帯閉鎖をできるようになること
YUBAメソッドを使って裏声を出せるように
本記事では女声のベースとなるミックスボイスへのアプローチ方法として、「YUBAメソッド」を紹介します。
参考 YUBAメソッドとは
YUBA(ゆうば)メソッドは実践研究を繰り返した結果である,YUBA理論(発声機能解剖生理学・発声制御理論)を基に,体系的に構築したヴォイストレーニング法です。ウラ声とオモテ声(地声)を分離・強化・融合し,音源生成の運動と調音運動をロスなく協調させ,効率よく発声・発音能力を向上させることができます。
YUBAメソッド自体は女声を出すためのアプローチではありませんが、それでもYUBAメソッドを利用することで、以下のメリットを得られます。
- 裏声(ファルセット)を強化できる
- 喚声点なしに、地声と裏声を行き来できるようになる
YUBAメソッドを使う理由は、ボイトレも何もしていないMTFや一般男性の場合、裏声はほとんど出せないか、出し方すら知らないことが多く、さらに高い声は喉に力を入れて絞りきって出す、など「女声を出す」以前の問題を抱えていることが多いからです。そこで、女声を出す前に、地声と裏声をきちんと出せたほうが良いと思います。
YUBAメソッドと言えば「ホーホー」が有名です。みなさんが匿名掲示板などで「ホーホーしろ」と書いてあるのを見たことがあれば、それはYUBAメソッドのことです。
毎日裏声を出し続けていると、だんだん声量が上がってきます。いずれにせよ、(YUBAでもなんでもいいので)裏声を出すことから始めてください。
なお、毎日部屋の中で「ホーホー」していると近所迷惑もいいところなので、周囲の人にはフクロウでも飼ってることにしておくと良いと思います。
裏声を出せたら、「低い裏声」も出してみよう
みなさんが何も意識せずに出す裏声は315Hzよりも高いかもしれません。そこで、裏声を安定的に出せるようになったら、より音程の低い裏声も出せるように訓練します。
ちなみに、餅屋の裏声の最低音は約180~200Hz前後でした。これはちょうど女声と認識される最低ラインですから、やはり裏声をベースに声作りしたほうが良いと考えました。
エッジボイス(ボーカルフライ)で声帯の開閉をコントロールできるように
もう1つ、エッジボイス(ボーカルフライ)を利用し、声帯をコントロールできるようになることをオススメします。エッジボイス(ボーカルフライ)を学ぶことで以下のようなメリットがあります。
- 地声の場合、力強い声が出せるようになる
- 裏声の場合、芯のある裏声(ヘッドボイス)が出せるようになる
「女声を目指しているのに、力強い地声が出せてどうするの??」といったところですが、餅屋はエッジボイス(ボーカルフライ)を学ぶことで、喉と声帯をうまく使うための感覚を養うことができると考えています。
- 声帯を閉じる・開く感覚を学ぶことができる
- 大きな声を出すために息を大量に送りこむ必要が無くなる(声が枯れにくくなる)
例えば、あなたがハスキーボイスと言われるなら、それは発声時に声帯をうまく閉鎖できていないため、発音に大量の空気が混じっているから、かもしれません(病気のときもあるので、異常を感じるときはすぐ病院へ)。発声時に大量の空気を使うと、どうしても声帯が乾き、声が枯れやすくなります。女声以前に、そもそも喉に負荷がかかっているような状態です。
エッジボイス(ボーカルフライ)はそのような問題を解決します。
ヘッドボイスは女声・・・というよりは、オペラ歌手のような声がでます。周囲の住人に何か問われたら、フクロウと一緒にオペラ歌手が居候していることにしましょう。
さっきはおっさん(失礼!)の動画だったので、今度はお姉さんの動画を紹介します。
裏声を鍛え、地声とスムーズに行き来できるように
YUBAメソッドやエッジボイス(ボーカルフライ)を利用する目標は、裏声をスムーズに出せて、地声と喚声点なく行き来できるようになることです。当然ですが、普段地声で生活しているMTFが、喚声点なしに地声と裏声を行き来できるようになるためには時間がかかります。
餅屋の場合、裏声の発声練習からはじめ、ミックスボイスが出る(喚声点なしに地声と裏声を行き来できるようになる)までに約1年かかりました(途中さぼったりもしましたが・・・)。1日や1週間でできるようになるものではないので、ボイトレしながらトランスを進めるなど、うまく時間を活用したいですね。
両者を継続すれば、きちんと声帯を閉鎖した地声や、芯のある裏声(ヘッドボイス)も出せるようになります。ここまでくれば、女声はでなくとも、様々な声質の声を出せるようになっているはずです。
「ミックスボイスが出せているか」の判定方法
地声→裏声→地声のサイレンのような発声を試してみてください。
今度はお兄さんの動画を(下記動画1分10秒あたりから)。
喚声点なく地声→裏声ができたならば、ミックスボイスは出ていると考えて良いと思います。もし「CanSeeVoice」を使っているならば、その時の声を測ってみてください。丁度良い高さの声が出ていると思います。
喚声点なしに地声→裏声(もしくは、裏声→地声)ができないならば、まだミックスボイスは出せていません。
音階を変えずに裏声→地声という方法もあります。こちらもミックスボイスを使えなければ真似できない方法です。
ミックスボイスを上手く出せない場合
ミックスボイスを上手く出せないときのチェックポイント
まず、繰り返しますが、1日や1週間で簡単にできるものではないので、最初は時間がかかるとお考えください。その上で、ミックスボイスを上手く出せない理由には以下のような原因があると考えられます。
- 芯のない裏声(ファルセット)の習得不足→裏声の力が弱いので地声に負けてしまう
- 芯のある裏声(ヘッドボイス)の習得不足→声帯閉鎖が不十分
- 地声よりも高い声を出すときに、喉を絞めて声を出している→発声スタイルが悪い
餅屋は、ヘッドボイスが出ないうちはミックスボイスも出ないのでは?と思います。ミックスボイスにはある程度の声帯閉鎖が必要だからです。
一方、ヘッドボイスが出せるならば、裏声の使いながら声帯閉鎖ができている状態ですので、それ以外の部分に問題がありそうです。
リップロールで喉絞めなしに発声してみよう
もし、喉絞めが原因ならば、リップロールを使って、のどに力を入れずに声を出すことも試してみてください。
動画中では声を出しながらリップロールしていますね。この時、地声や裏声など、様々な音域で音を出してみることをオススメします。意識せず発声するだけでなく、高い地声も低い裏声もです。
喚声点付近で「GOOG(グッグ)」する
Goog(グッグ)とは「ロジャー本(“歌う力"をグングン引き出す ハリウッド・スタイル 実力派ヴォーカリスト養成術(CD付き) )」の執筆者であるロジャー・ラヴの提案するボイトレ方法の1つで、「グ」の発音で発声を鍛えるものです。
これを地声と裏声の喚声点付近で地声→裏声→地声→裏声・・・と行き来しつつ試してみてください。
餅屋の女声練習方法
「部屋の中で奇声をあげる」なめこ屋
以下のことをやっています。
- とにかく裏声を出す
- 初期の頃はエッジボイスをやってました(今は感覚を掴んだのでやってない)
- 地声と裏声でリップロールした後に、サイレンのマネをして、地声と裏声をいったりきたり
裏声を出す習慣がない場合には、とにかく裏声を出して、裏声を出すための筋肉(輪状甲状筋)を使うことを学ぶことが大切だと思ってます。最近はリップロールをした後に地声と裏声をいったりきたりすることが多いです。
周囲からは「女の服を着た、引きこもりの髪の長い男が、部屋の中で奇声を上げている」と思われてるんだろうな、と勝手に考えています。でも、おかげで声が枯れやすいとか、地声すら弱々しいといった問題は解決できました。
MTFの場合、声がパスできないため、人との会話を避けてしまうことはあるかと思います(経験済み)。また、例えばクレジットカードの本人確認の電話で、「本当に本人ですか?」と何度も問われた経験などもあるかと思います(経験済み)。
「だから、本人や!!って言ってるだろ!!!!(だみ声」
もし、みなさんにそういった経験があるなら、ぜひ今日からでもボイトレを始めてほしいなと思います。
声帯の手術は選ばなかった理由
手術する方法もありますが、餅屋には女声というよりも、声の高い男性の声に聞こえることが多いです。その声は手術しなくても出せる声ですから、それならボイトレで頑張ろうじゃないか、と餅屋は思います。
訓練しても男性から女性にはなれませんが、男声から女声は訓練次第で実現できることを忘れないでください。
まとめ
まずは、約172Hz~315Hz(平均217Hz)の声を出せるようになるべく、裏声やミックスボイスを使って、高い声を出そうという話でした。また、その際の練習方法として、YUBAメソッドやエッジボイス、リップロールなどを紹介しました。
抑揚のつけ方とか、もっとわかりやすいコツみたいなのは、また近い将来に紹介します。
参考ウェブ
徒然と○日目:個人の女声習得体験談
神戸でボイストレーニング | K VoiceTraining Lab:様々なボイトレサイトのうち、わかりやすいかなと思ったところ
喉締めになる原因はのどの筋肉に力が入っているから:地声→裏声の行き来ができない理由。リップロールの大切さに気づく
カラオケ板ミックスボイス出し方まとめ:いろんなノウハウが雑多にあるので参考にできることも多い
れみぼいす:定番
新しい女声の教科書:マジリスペクト