山梨大学医学部附属病院 性転換手術(SRS・性別適合手術)ガイドブックシリーズ一覧
目次
オペ1日目(手術直後)
リカバリールームへ
名前を呼ばれると、意識が朦朧としたまま、手術室で目を覚まします。自力で深呼吸ができることを確認したら、手術台からベッドに移され、リカバリールームへと搬送されます。リカバリールームは、ナースステーション向かいの1人部屋です。いざという時にすぐ駆けつけられるよう、この立地になっています。手術時間は367分(約6時間)。リカバリールームの時計は14:30を指していました。
術後3日間の過ごし方
術後3日間は絶対安静で、ベッドから出ることはできません。両足に血栓症防止のエアーマッサージャーが取り付けられ、常に揉まれています。身体からは、いろいろなチューブが生えています。
- 陰圧バッグドレーン x 2
- ペンローズドレーン x 2
- 尿カテーテル
- 抗生剤点滴
- ペインフリー
飲水はオペ3時間後から、食事はオペ翌日から食べられるようになります。ベッドから出られるようになるまでは、低残渣食という、大便になりにくいペースト状の食事になります。尿はカテーテルから排出されますが、大便は介護用のおまるを使用する必要があります。
医師の回診は、退院まで原則毎日行われます。異常を感じたり、疑問に思う点があれば、遠慮なく伝えましょう。実際に執刀した医師と日本語で会話できるのが、国内オペ最大のメリットです。
ペインフリーの使い方
ボタン式の痛み止め「ペインフリー」、正式名称を「PCAポンプ」と言います。ボタンを押さなくても、常に一定量の痛み止めが流れていて、特に痛みが強くなりそうなときにボタンを押すと、追加で投与されるしくみです。
安全装置がついていて、何回ボタンを押しても、最大量以上は出ないようになっていますが、ボタンを押した回数は記録されています。
ボタンを押した回数が多い場合、痛みが強いと判断し、薬の量を増やします。逆に、少ない場合は痛みが弱いと判断し、薬の量を減らします。ボタンを押しすぎると離床が遅れることもありますので注意してください。
オペ2日目
絶対安静継続中。まだ上半身を動かすと痛みます。タイでのオペとは違って、周りにいるのはお年寄りばかり。孤独との戦いです。
オペ3日目
経過が順調なら、そろそろペインフリーが抜ける頃です。手術中に無理な姿勢を取ったらしく、左腕がしびれています。私の前にオペをした人も同じ症状だったそうです。
さて…眠れない。夜中の3時ぐらいに股間がやたらムズムズするのです。痛みではない、ムズムズ感。幻肢のようなものでしょう。こういう時には、ナースコールで眠剤をお願いすることができます。
オペ4日目: 歩行開始
オペから4日目、いよいよ歩行許可が出ます。最初に立ち上がる時は、看護師立会いのもとで行います。丸3日寝たきりなので、かなりフラフラすると思います。まずは、ゆっくりトイレまで歩いてみましょう。いよいよ、出来上がった術部とのご対面です。
…あまりのグロさに、3日間の寝たきり生活でズタボロになったメンタルにトドメが刺さり、しばらく号泣していました。ちょっと心の準備とか必要かもしれない。
髪の毛がベタベタしてくる頃ですが、美容室にあるような洗頭台で、看護師さんが洗ってくれます。
オペ5~6日目: 尿カテーテル抜去
邪魔なカテーテルが抜けて、歩ける範囲もぐっと広がります。病食も、低残渣食から、3分粥にアップグレードされます。ただし、陰圧バッグドレーンとペンローズドレーンはまだ刺さったままです。
この日から、排尿も自力で行います。術部がパンパンに腫れていて、かなり飛び散ると思いますが、時間と慣れの問題です。
オペ7日目: ドレーン抜去
ついに、身体に刺さっているチューブがすべて抜けます。この日から、シャワーが解禁されます。シャワーは毎朝自分で予約を取りに行きます。忘れると入れないので注意しましょう。
T字帯も卒業し、普通のショーツが使えるようになります。術部からの出血はまだ続いているので、夜用のナプキンが必須です。
シャワー時には、膣洗浄をするよう指示があります。初日は介助してもらうこともできるので、プチシャワーセペの使い方をきちんと抑えましょう。
この時点で、リカバリールームから、一般病棟へ移動することができます。リカバリールームに居続けることもできる場合がありますが、1日当たり3,240円加算されます。
オペ8~13日目: 退院までの日々
ほぼ日常生活を取り戻したら、退院までの生活をエンジョイしましょう。さすがは山梨。天気が良ければ、病室から富士山だって見えちゃいます。
病食の変遷
低残渣食を卒業して歩けるようになったときの3分かゆ。
9日目から普通食に移行。朝ごはんはお米の日とパンの日があります。ほんのり甘い食パン。
病食といえど侮るなかれ。サプライズで現れた冷やし中華。杏仁豆腐つきでテンションがあがった。
オペ14日目: さあ、退院だ!
退院の朝、抜糸を終えたら病室で待機します。ゴチバトルよろしく、事務員さんが請求金額の書かれた紙を持ってきます。
ぎゃああああああああああ!!!!!
事前に聞いてはいたけれど…心臓に悪い。
さて、リストバンドにハサミが入れられ、いよいよ旅立ちの時です。請求書を窓口に提出します。支払いはデビットカードが一番確実だと思います。暗証番号4桁をポチポチ押すだけで160万が…。
会計が終わったら、診断書受付へ向かい、手術証明書を申し込みます。申込書の控えをもらったら、売店の近くにあるサービス窓口「里仁会」へ向かいます。ここで控えと手数料を出して、診断書を郵送してもらいます。帰りに中央線特急を使う場合は、あずさ回数券を里仁会で買っておくとよいと思います。1枚2,850円で、駅前の金券ショップより割安です。
さて、後はおうちに帰るだけ。家に帰るまでが性別適合手術です。気をつけて。